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  • 2013.04.25 Thursday
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いつかの踏切

 真夏の熱い日だった。

 遮断機の向こう側に黄色い電車が走っていた。

 踏切の鐘の音は聞こえない。

 人々の表情も見えない。
 
 グレーな景色に電車だけがただ黄色かった。

 僕は母が漕ぐ自転車の後部座席からぼんやりと行き交う電車を眺めていた。

 
 
 7歳の時だった。

 僕は小児腎臓病にかかった。

 毎日全身に疲労を感じていたので、小さいながらも、これはあんまり良くないんだなと思っていた。

 食事制限と通院が続き、最後は母の腎臓を移植するところまできていた。

 「あんたの腎臓がダメだったら、お母さんと取り換えればいいんだから。何にも心配しなくていいよ」

 病院の帰り道の踏切で自転車をとめた時、母が言った。
 
 咄嗟に何と返事をしていいか分からなかった。

 さっきまで聞こえなかった鐘の音が大きく聞こえた。

 赤いライトの点滅が忙しかった。

 とても悲しかった。


 
 そんな母の肺がんは静かに確実に進行している。

 昨日も実家に寄った。

 気丈な母は元気にふるまってくれて、それが余計に切なくて。

 
 
 あの頃と同じように何も言えなくて、戸惑う自分がそこにいた。

 あの踏切に行ってみよう。



 桑村よしくに

 


 


 


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