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  • 2013.04.25 Thursday
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ゲイラカイト

 「おい離していいぞ!」

 次男が手を離すと、バタバタと音を立てながら凧が勢いよく空に昇った。

 「おっー!ゲイラカイトはやっぱりスゲーな、パパ!」

 「そうだよ!こいつは他のとちょっと違うんだよ!パパは他ので凧揚げしたことないけどな。」

 
 先週スキーショップに行った時に、レジの横に置かれていたゲイラカイト。

 あの白地に黄色と黒の両目がプリントされたヤツ。

 懐かしくて買ってしまった。

 
 風が吹く日曜日の公園の空に揚がった凧がドンドン小さくなる。

 「もう糸がないね、パパ!」

 糸が最後まで伸びると、糸を持つ手に凶暴な風の力が伝わる。

 「ほら、持ってみろよ。」

 次男に糸を渡すと

 「うわっ!すげーグイグイ引いてる!オレまで飛ばされそうだ!何だか怖いよ、パパ。」

 
 そう、この怖い感じを味わって欲しかったんだよな。

 ゲイラカイトの大きな二つの目玉が小さくなって、高い空からこっちを睨んでいる景色は今も昔も変わらない。

 

 風の強い土曜日の放課後だった。

 小学生の僕は、継ぎ足した百メートル以上の凧糸を全部伸ばして、一人で凧を揚げていた。

 近所の高校の広いグランドと空は、僕と凧だけの空間になった。

 楽しい時間だったが、夕日が沈みかけて空が暗くなるとなんだか急に怖くなった。

 体ごと空に持っていかれそうな感じがした。

 毎日続く父の暴力を恐れていた僕は、このまま飛ばされてもいいと思った。

 その時、体の力が一瞬抜けて、思わず手を離してしまった。

 ゲイラカイトだけが暗くなった空に消えていった。

 悲しい景色だった。


 
 「パパ、今度はさ、糸をもっともっと長くして、飛ばそうぜ!」

 糸を引きながら興奮した顔で次男が言う。

 「そうしたらどうなんの?パパ。」

 「そうだな、一緒に空に飛ばされちゃうんじゃないのか。」

 「オレの体が浮くぐらい高く上がるといいね!パパ、凧揚げ楽しいね、またやろうね!」

 
 次男と一緒に見上げたゲイラカイトが笑っていた。


 桑村よしくに  

 

 

 


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